16,飲む薬―飲むべきか飲まざるべきか,それが問題だ!!
 最初に質問です.あなたは次のどちらのタイプでしょう?(1)薬は健康を維持する上でとても役立つから,評判の良い薬は何でも試してみたい.(2)薬には副作用が付きものだから,できる限り飲みたくない.
 やや極端な例ではありますが,あなたの考えはどちらにより近いでしょうか?
 薬には大きく分けて3つのタイプがあります.まず第一につらい症状をとる薬.頭痛を和らげる鎮痛薬や,咳のひどいときに服用する咳止めはこのタイプの薬ですね.第二に病気そのものを治す薬.抗生物質がその代表選手です.そして,第三に病気の発症を予防する薬.このタイプの薬には,血圧やコレステロールを下げる薬があります.
 症状をとる薬は,あくまでもつらい症状を楽にするのが目的ですから,症状が軽いときには服用しなくても良いでしょう.ただ,痛みを取ることでゆっくり睡眠が取れたり,咳を抑えることで体力の消耗が少なくなったりして,病気の治りが早くなることもあります.
 病気そのものをなおす薬を服用すべきかどうかは,病気の種類によるでしょう.放置しても治る程度の軽いものであれば,薬は服用せずに自然の治癒力に任せるのも一法です.しかし,多くの場合,抗生物質を正しく使うことにより,病気の回復が著しく早くなったり,場合によっては命を救うこともあります.  病気の予防のために飲む薬は,その薬を服用することでどんな病気が予防できるかによって価値が決まります.脳梗塞や心筋梗塞のような重い病気を予防できる薬は,飲む価値が高いと言えましょう.
 一方,薬には必ず副作用があります.場合によっては,命に関わるような重い副作用も,稀ですが起こりえます.しかし,重い副作用が起こるのはごく一部の人であって,ほとんどの人は安全に薬を服用できるのです.さらに,副作用の多くは,早期に気付いて適切な処置を取れば,回復可能なものです.
 私たち医師は,薬を飲まなかったらどうなるかと考える一方で,その薬でどのような副作用がどの程度の頻度で起こるかを考えます.そして利益が危険性を上回ると判断したときに投薬を行います.血圧の薬やコレステロールを下げる薬を長期間服用した人は,服用しなかった人に比べて,脳梗塞や心筋梗塞による死亡率が明らかに少ないことが立証されています.このような薬を飲まないというのは,難破船上にあって,救命ボートに乗らないという行為に等しいとさえ思えます.大切なことは,副作用を恐れるあまり,薬の持つ素晴しい効力まで否定してしまわないことです.
 ただ,少ないとはいえ,副作用は起こりうるものですから,薬が合わないと思ったら医師に早く相談することと,定期的な検査を欠かさないことは,是非守ってください.

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