12,脳卒中は動かしてはいけないという嘘
 近ごろは耳にすることがやや少なくなりましたが,かつては脳卒中の患者は決して動かしてはいけないと言われたものです.動かすと頭の中でどんどん出血して悪くなると考えられていたのでしょう.脳卒中という病気には,脳の血管が詰まる場合(脳梗塞)と破れる場合(脳出血)があります.かつては脳出血が多かった日本ですが,今では脳梗塞の方がずっと多くなっています.今日,脳卒中,とくに脳梗塞の場合は,一刻も速く病院に運んで治療を始めることが,その後の回復を左右する重要な要素であると考えられています.
 どのくらい緊急を要するかは脳梗塞の種類によっても違いますが,脳塞栓症と呼ばれる脳梗塞の場合,最新の治療を受けられる時間の限界は,症状が起こってから3時間以内と言われています.しかも,3時間の中には,病院に着いてから行う検査の時間も含まれていますので,病院には遅くとも1時間以内に到着していなければなりません. 病気が起こって,しばらくおろおろしていると,1時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます.ですから,体の片側の麻痺や言語障害や意識障害などが急に起こって,脳卒中ではないかと思うときには,一刻も早く病院を受診してください.どこの病院に相談したら良いかわからないときは,とりあえずかかりつけ医に相談しましょう.また,3時間を過ぎたら後はみな同じかと言うと,決してそうではなく,治療を早く開始すればするほど良くなる確率が高いのです.このように,脳卒中は動かしてはいけないのではなく,病院へ運び込むために一刻も早く動かさなければならない病気であると覚えておいてください. ただし,頭を上げることは禁物です.軽症と思えても,必ず頭は低くして(すなわち横になった状態で)移送してください.また,病状が落ち着いたらなるべく早く, 専門の病院でリハビリを開始することも,その後の回復の上で極めて重要です.

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