10,上手な病院のかかりかた
 病気の治療がうまく行くかどうかは,一重に正しい診断がなされるかどうかという一点にかかっています.実際に病気を正しく診断するためには,病歴を詳しく聞き,身体の診察を行い,検査をするという三つの段階をきちんと踏むのが原則です.これら三つの中でも最も大切なのが,正確で詳しい病歴です.病歴がきちんとしていないと,その後の診察や検査の選択を誤り,診断がつかないばかりか,むしろ誤診を招くことさえあります.病気によっては病歴だけでほとんど診断が確定し,難しい検査をあれこれ受けなくても済む場合もあります.病歴が診断の上に占める重要性は病気ごとに異なるものの,病歴で八割程度見当をつけると言っても言い過ぎではないと思います .
 例えば頭痛で来院されたある女性の場合,「痛みはどのくらい続いていますか?」とお尋ねすると「今朝から始まって現在まで続いている」とお答えになりました.そこで「その痛みは朝からずーっと続いているのですね?」と念を押すと「そうです」とお答えになります.しかし,よくよく聞いてみると,鋭い刺すような痛みが数秒間あり,その後しばらくは痛みがないものの,同様の痛みが何度も繰り返して起こるということが判りました.確かにこれも朝からずーっと続いていることに違いはありませんね.しかし,絶え間なく続く頭痛と,この例のように断続的に続く頭痛は全く意味が異なり,その後の診察や検査,さらには投薬さえ,随分違ったものになってきます.
 病院へおいでになる前に,今回相談したい症状についての病歴を紙に書いて戴くと,診断までの時間を短縮できるばかりか,不要な検査を受けたり,誤診に基づく不適切な治療を受けたりする可能性が非常に低くなります.あまり詳しい病歴である必要はありません.むしろ,簡潔な方が良いくらいです.物語のあらすじを覚えるのに,詳しすぎると覚えにくいのと同じ理屈ですね.病気を治すのは,病院のスタッフと皆さんとの共同作業なんですよ.

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