5,意外に重要な口の中の衛生
 口の中を清潔に保つというのは意外に難しく、1日に数回歯磨きしても、臭いが気になったりします。まして自分でうまく歯磨きができないような方だったらどうでしょう。介護を受けている方の口の中は「介護の鏡」と呼ばれます。この言葉は、口の中の衛生が生命の危機に直結しないと考えられてきたため、現実の介護の場面ではなかなか手が回らず、後回しにされている現状をよく表しているように思います。しかし、最近では口の中の衛生状態が肺炎と密接に関わっていることが知られるようになりました。本章では、口の中の清潔と肺炎の関係についてお話したいと思います。

 誤嚥性肺炎というのは、食べ物がうまく食道の方に行かずに危険の方へ流れてしまい、気管支や肺で食べ物に付着した細菌が増殖して、肺炎を起こすことを言います。お年寄りがご飯を召し上がっている時、ゴボゴボとむせたりすることはありませんか?もしあるとしたら、それが誤嚥の徴候です。また、飲み込みや咳をする反射が弱い方は、睡眠中に誤嚥を起こしていることがしばしばあります。すなわち、睡眠中に口に中の細菌が唾液とともに気管の方に流れ込むため、誤嚥性肺炎が起こるのです。特に脳卒中で寝たきりになった方や、重いパーキンソン病の方は要注意です。誰も気がつかないうちに熱を出し、慌てて病院へ駆け込むと肺炎だったというのは少なくありません。その原因のかなりの部分を誤嚥性肺炎が占めています。それでは、この「知らぬ間に起こる誤嚥」を予防するにはどうしたら良いでしょう。

 まず、大切なのは口の中の掃除です。可能ならば体を横に向けて、不可能ならば仰向けのまま、顔だけ横に向けて行ないます。歯がない方は緑茶で湿らせた脱脂綿を指に巻きつけ、口の中を丁寧に拭きます。歯がある方はぜひ歯ブラシで磨いてください。少し難しいと思われるかもしれませんが、1本1本を磨くようなつもりでゆっくり行えば大丈夫です。その後はうがいです。可能ならばうがいをしていただくに超したことはありません。しかし、意識がはっきりしない方では、水を口に含むという行為自体が非常に危険です。水分は、食事の時に誤嚥しやすい物の第1位に挙がっているくらいなのですから。このような場合には、脱脂綿などで口の中を丁寧に拭き取ってください。病院では、割り箸に脱脂綿を巻きつけて緑茶で湿らせて使用しています。ただし、脱脂綿の巻きつけ方に注意が必要です。あまりゆるすぎると、脱脂綿だけがそのまますっぽり抜けてしまい危険です。

 口の中を人に触れられるというのはあまり気持ちのよいものではありません。そのため、なかなか口を開けてくれず、きれいにできないとお困りの方も多いでしょう、そのような場合には、最初から完全にきれいにするのではなく、少しずつ爽快感を味わっていただくのが近道です。とは言っても、少々強制的に行わねばならないケースもあり、辛いところです。「根気強く、丁寧に」これが口の中を清潔に保つ秘訣かもしれません。
 また、薬局に行けば、介護に役立つデンタル用品がおいてあります。舌を磨く舌ブラシもあれば、スポンジでできた歯ブラシのような物もあります。病院の介護用品コーナーにもおいてあります。このような便利な商品を上手に利用していくとずいぶんきれいになり、介護する方の手間も省け、さらには誤嚥性肺炎の予防にもつながることでしょう。

まとめ
 ●誤嚥・窒息は予防が第一
 ●たこやきサイズは特に危険
 ●のどに詰めたら、呼吸の状態をよく観察
 ●誤嚥の後は医師の診察を

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「よりよい介護のための 89のヒント」メディカルレビュー社発行より引用しています