インドネシア保健医療支援(看護師)

事業の活動を体験して

福岡赤十字病院 看護師 久冨千鶴 (派遣期間:平成20年6月5日~9月3日)

インドネシアでの活動の写真 今回、私は日本赤十字社の国際救援・開発事業の一環であるインドネシア保健医療支援事業の派遣要員として、インドネシアのボゴール赤十字病院(以下ボゴール病院)で、看護師として活動する機会を頂きました。今年で4年目になるこの事業は、日本赤十字社からボゴール病院への医療資機材の支援および医療要員の派遣を行い、地域住民への保健医療サービスの充実と医療向上を支援する目的で実施されています。福岡赤十字病院からは今年の2月に約1ヶ月間、外科医師が派遣され、私は二人目の派遣者、看護師としては初めての派遣となりました。

 インドネシアは1万8000もの島々で成り立つ、災害がとても多い国のひとつです。8割をイスラム教の人々が占めています。国内では、格差社会の広がりが年々問題視されています。ボゴール市はジャカルタから南に60kmの場所に位置し、週末は避暑地として多くの観光客で賑わいます。降水量が多く、雨の町ともいわれています。ボゴール病院はこの地域で最も大きな総合病院で、周囲の病院が富裕層を対象としている中、6割以上のベッドを低所得の方々に提供しています。そのため、医療費を払えない人も多く、収益が上がらず、医療準備に投資する事が困難な状況が続いています。そこで日本赤十字社は医療設備の充実と医療技術の支援を行い、赤十字として、地域住民への公平な医療サービスを提供できるように取り組んでいます。

 私は、主に集中治療室、外科病棟で現地スタッフと共に看護ケアに参加しました。病室にナースコールはなく、使い捨ての手袋は洗って再利用している状況でした。医師の数も不足しており、看護師が傷を縫ったり消毒したりと、日本の看護師との役割の違いを感じました。そこで、私からは院内感染対策や一次救命処置について、そして彼らからは物品の少ない中での工夫やデング熱・腸チフスなどの熱帯地域特有の疾患について、お互いに知識を交換し、どうすれば質の高い医療が提供できるのか話し合いました。費用の問題、文化や習慣の違いなどもありましたが、患者さんのためによりよい医療を提供したいという思いは同じだと感じ、私もうれしく思いました。印象的な患者さんは外科病棟で出会った少年です。骨折した後すぐに病院に行けばよかったのですが、伝統のマッサージ療法へ行き、来院が遅れました。そのため傷が感染し、足を切断しなければなりませんでした。一緒に松葉杖で歩行練習をしながら、すぐに来院できていれば両足で歩くことができたはずなのにと、ジレンマを感じました。

 地域に目を向けると、多くの人々はお金がなく、病院に来ることさえできないのが現状でした。また、お金の問題や教育の違いから、お祈りや伝統療法が強く信じられており、まず伝統療法へ行ってみて、だめなら病院へ行こうと考える人が本当に多いことに驚きました。院内でも、お金が払えず、検査や手術が受けられなかったり、治療を継続できない患者さんも多く、大きな格差社会を目の当たりにし、病院に来なくていいように、病気にならないための予防接種や生活環境の整備などの予防的な関わりがここでは大切だと思いました。この派遣の中で、医療だけでなく、格差社会や宗教的な考えの違い、文化や習慣などを学び、このような違いを理解し、相手を尊重した関わりをしていく必要性を感じました。これらの学びを今後、役立てていきたいと思います。

 赤十字のこのような開発途上国への支援は、皆様のご支援およびご協力により成り立っている活動だと感じています。これからも、継続した支援ができることを心より願っています。